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A. シリコーンオイルやシリコーン生ゴムなどが主として2官能性単位で構成されているのに対して、シリコーンレジンでは、3官能性あるいは4官能性の単位が分子中に多く取り込まれています。これにより三次元の網目構造が作られ、硬化後は硬い皮膜となります。なお、「官能性」とは高分子化合物を生成する結合手の数のことです。
A. シリコーンワニスも広義にはシリコーンレジンに分類されます。狭義には、溶剤を含むものもシリコーンワニスに分類されます。また、シリコーン粘着剤(PSA)もシリコーンレジンの仲間と言えます。
A. シリコーン粘着剤は、通常PSA(Pressure Sensitive Adhesive)と呼ばれ、2官能性のシリコーン生ゴムとシリコーンレジン(MQレジン)を組み合せたものです。シリコーン粘着剤に使われるシリコーンレジンには、水酸基(-OH)などの極性基が多く含まれているため、強い粘着力を発揮します。使用に際しては、過酸化物や付加反応により、シリコーン生ゴムを架橋することにより、粘着力の耐熱性が大幅に向上します。
PSAは、通常の粘着剤ではなかなか接着できないフッ素樹脂にも強い粘着力が示します。これは、シリコーン特有の優れた濡れ性にも関係があります。耐熱性、耐寒性、電気絶縁性などシリコーンの長所を生かした用途のほかに、最近では救急絆創膏にも利用されています。粘着力のほか、PSAは耐水性とガス透過性にも優れ、水分を完全に除去するため、蒸れない絆創膏が実現します。
A. いろいろありますが、よく耳にする用語について解説します。
酸価:塗膜としてではなく、シリコーンワニスの性質を示す値で、ワニスの酸性度を表します。シリコーンワニスを塗料に調合する際、顔料などが配合されるため酸価が高くなり、塗料としての保存安定性が劣化します。酸価は低い方が好ましいわけです。
塗膜にした場合には、硬くて柔軟性に富み、下地によく付着している強靭な塗膜が理想的です。そのような基本的特性を評価するため、以下のような試験項目が採用されます。
屈曲性:塗膜の柔軟性を評価するものです。鉄、ステンレス、アルミニウムなどの板に10~100 μmの塗膜を調製し、その試験板を折り曲げ、その部分のヒビ割れ抵抗性をみます。
試験片を指定の温度に一定時間曝し、室温に戻した後、届曲性を評価することで、耐熱性を評価できます。例えば、直径3 mm、250℃、300時間が指定されている場合、250℃に300時間曝し、折り曲げ直径3 mmで試験片を折り曲げても塗膜に割れが発生しないと、仕様の屈曲性が満たされます。
衝撃試験:衝撃による曲げに対する、塗膜の靭性の評価法。一例として、デュポン式衝撃試験を以下に示します。突端に一定の丸みを持つ撃ち型と、その直径と合致した窪みをもつ受け台との間に試料を置きます。おもりを所定の高さから落下させて塗膜に衝撃を与え、塗膜のキズや剥離を評価します。(500 g、1/2″)で30 cmが指定されている場合、500 gのおもりを1/2インチの丸みの撃ち型に30 cmの高さから落とします。異常が発生する落下高度が高いほど、耐衝撃性に優れます。
エリクセン試験:塗膜の延性の評価法。この方法では、試験片に鋼球を押し出します。圧痕深さ(mm)が大きいほど、延性に優れます。
蓄針試験:碁盤目テープ法とも呼ばれます。1 mm間隔で塗膜を貫通して素地に達する、縦横各11本の切り傷を碁盤目状につけ、その碁盤目にセロハンテープを貼り、それを剥がしたあとの塗膜の基板への付着状態を評価します。100/100とか80/100などと表記されます。分子の数値が大きいほど、優れた付着性を示します。
このほかに塗膜の硬さや艶を測定する鉛筆ひっかき(鉛筆硬度)試験や鏡面光沢度試験などがあります。
A. シリコーンを塗布する際には、忘れてならないのが耐候性試験です。塗料塗膜に限らず、屋外で使用される部材の耐久性を評価する重要な項目です。
試験体をそのまま屋外に曝す屋外暴露試験では、結果が判るまでにとても長い期間が必要となる場合が多いので、耐久性の結果を早く知るための評価法として、促進老化試験が重要です。人工的に厳しい気候条件を再現して、屋外暴露試験の20~50倍の速さで試験を完了できます。
A. 皮膜の粘着性をみる試験値です。簡単に言えば、APSAを塗布した試験片を傾斜させ、色々な大きさの金属ボール(31種類)を転がします。傾斜面に止まるポールのうち、一番大きなポ一ルの番号で粘着性を示します。番号が大きいほど、粘着力が高いことを示します。
A. プラスチックは大きく2種類に分けることができます。1つは「熱可塑性樹脂」と呼ばれるもので、熱を加えると柔らかくなり、冷やすと元のように硬くなります。いろいろな形に容易に成形加工できるという利点があります。もう一つは「熱硬化性樹脂」と呼ばれるもので、熱を加えると樹脂内部で化学反応が起こり、硬化するタイプです。熱可塑性樹脂のように繰り返し加工することはできませんが、熱硬化性樹脂のほうが耐熱性に優れています。
日本では年間約1200万トンのプラスチックが生産されていますが、約8割が熱可塑性樹脂です。
A. 全く新しい化学結合を持ったプラスチックの開発は困難とみられています。しかし、既製のプラスチッククの機能を組み合わせてそれぞれの弱点を補強し、長所を生かしていく複合化の技術が盛んに研究されています。複合的なプラスチックは、「ポリマーアロイ(ポリマーブレンド)」と呼ばれ、なじみのあるABS樹脂にもこの技術が採用されています。
A. もちろんできます。シリコーンには、他の有機材料にない特徴(滑り特性、耐熱性、耐候性、柔軟性など)がありますので、多様な用途でこのような性質が利用されています。
A. プラスチック改質に使用されるシリコーンには■シリコーンオイル、■シリコーンパウダー、■シラン化合物などがあり、シラン化合物はシランオリゴマーに分類することができます。
A. シリコーンオイルはその潤滑性を利用して、樹脂の摺動特性や耐磨耗性を改善することができます。私たちが日常使用しているカセットテープ、ビデオテープのリール材(ボリスチレン)などに使用されています。
シリコーンパウダーは主にプラスチックフィルム(OPP、OPET)の表面潤滑剤、アンチブロッキング剤として使用されています。フィルムが延伸加工される際に、添加したパウダ一がフィルム表面全体に微細な凸部を形成するので、少量の添加で効果を上げることができます。また、シリコーンパウダーは熱による変形がないので、特に、高速で機械包装される包装用フィルムに使用されています。
シラン化合物,シランオリゴマーは、プラスチックと配合材(顔料、骨材など)の相溶性改善に使用されます。
A. シリコーンにはいろいろな有機基を導入できます。そのため、単なるポリマーブレンドだけではなく、有機ポリマーの骨格にシリコーン骨格を導入したシロキサン有機コポリマーが検討され、一部実用化されています。
単に両者の特性を兼ね備えているだけでなく、予期しない新たな特性が生まれる司能性もあります。
例えば、シリコーンの酸素透過性とポリメタクリレートの機械的特性と透明性の長所を組み合わせて、酸素透過性ハードコンタクトレンズ材が開発され、実際に商品化されています。また、特殊なシリコーン樹脂がポリカーボネートの難燃添加助剤として効果があることも確認されています。
このように、プラスチックの特性の差別化、高機能化を図るために、分子構造の設計変更が比較的自由にできるシリコーンとの組み合わせは、今後のプラスチックの改質の原動力となることが大いに期待されています。
A. 一見そうですが、実は、化学組成が同じでも、水と水蒸気では物性はまったく異なります。これが不思議な点です。
A. まず、水にはその中心に集まろうとする力があります(凝集力)。表面積をできるだけ小さくしようと働くので、この力を表面張力と呼んでいます。そのため、水を無重力空間に浮かべると、形が真球状になります。この現象は水だけではなく、液体すべてに共通しますが、水では特にその力が大きいのです,一方、地上で水滴を物体表面に戴せると、重力のほか、物体表面が水を引き寄せようとする力(付着力)の影響を受けることになります。
A. 物体の表面では、その分子のもつ力によって、近接する水の分子を引き寄せようとしています。力の強さは表面の物理的・化学的構造によって異なりますが、この力が十分に大きければ、水の凝集力に打ち勝って、水は広がって表面が濡れます。逆に、物体表面の引力が弱いと、水は凝集力で丸まって水滴になり、いわば水が撥かれた状態になります。図中の接触角は濡れにくさの度合を示すもので、90°を超えると強い撥水性があることになります。シリコーン膜は、もともと引力の小さいメチル基が表面に並んでいるので撥水性を示します。ジメチルシリコーンオイルで処理したガラス板では、水に対する接触角は約103°です。
A. 水蒸気の場合は、水滴とは逆に周囲へ広がろうとします。この拡散力が透湿性の原動力です。
A. 水蒸気に限らず、気体が皮膜を通りやすいかどうか(気体透過係数)は、皮膜中への気体の浸入しやすさ(溶解度係数)と皮膜中での気体分子の拡散しやすさ(拡敵係数)によって決まります。皮膜中では、当然自由空間に比べると気体の働きは制限されますが、その程度は皮膜を構成している物質により異なります。シリコーン皮膜中では、他の合成ゴムやプラスチックの皮膜に比べて、桁違いに気体の拡散係数が大きいのです。シリコーンは一般に、隙間の多い分子構造のため、極めて高い透湿性を示すと考えられます。同様に水蒸気では、特に溶解度係数が大きいためと考えられます。
A. 例えば、弾性コーティング材トスコートは、建築物外壁への水の浸入を防ぐのが役目です。壁内部の水分は、閉じ込められずに水蒸気として放出されるので、塗膜ふくれを防ぎます。また、絆創膏の粘着剤に応用すれば、防水のほか、皮膚の汗蒸れを防ぐ効果があります。
A. 他の気体でも透過係数は大きいですが、気体の種類によりその程度に差があります。弊社ではシリコーン膜の酸素と窒素の透過添数の差を利用して、空気中の酸素比率を高めています(酸素富化)。その一例として、酸素吸入器や高効率燃焼炉用の酸素富化装置などがあります。
A. 油は表面張力(凝集力)が水の約1/3と小さいので、通常のシリコーンの表面では付着カの方が強くなり、油は広がってしまいます。つまり、撥油性は十分ではありません。
良好な撥油性を得るため、フッ素原子を利用して、付着力が低いシリコーンを作ります。特にシリコーンにトリフルオロメチル基(メチル基CH3‐の水素をすべてフッ素で置換したCF3‐)を持つ原子があれば、付着力が大幅に低くなります。このような化学構造をもつフルオロアルキルシラン類が市販されていますが、このシランで処理すると、物体表面に撥水性はもちろん、撥油性も付加され、優れた防汚性を発揮します。
A. 「何にでも」というのは少しオーバーですが、確かにシリコーンにより製品設計の自由度が大幅に高まります。シリコーンを採用して、製品本来の性質を改善し、多数の製品が開発され、市販されています。他の物質への低い付着力に由来する撥水性を付加した製品だけでも、離型用シリコーンや、剥離紙用シリコーン、普通紙コピー機の熱定着ロール紙用シリコーンゴムなど、多種多様な用途で数多くの製品があります。
A. 以下の表には、化学結合の強さの目安となる結合エネルギーを示しています。
結合エネルギー
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A. 結論を言えばNoです。ジメチルシリコーンオイルを例にあげると、粘度が10 mm2/s、100 mm2/sの引火点(AAST M D92による試験法)はそれぞれ160℃以上、300℃以上です。また、一般のシリコーンゴムは簡単には燃えませんが、一度着火すると燃え続けます。
シリコーンはオイル、ゴムおよびレジンの3つの基本形に分類されますが、この順序で難燃性が高いと考えてよいでしよう。
A. 一般にシリコーンの難燃性は自己消火性(自己消炎性)のことです。これは、炎を当てて着火させても燃え広がらずに自然に火が消えることです。このような特性を持つ製品には、かなりの工夫が取り込まれています。
こうした特性は、シリコーンに限ったものではありません。高分子の難燃化とその燃焼過程から、難燃性を実現する複数の方法が考えられます。その代表的なものは、1)「気相反応の制御」と2)「分解生成物の制御」の2つです。1)の場合、燃焼に抑制効果がある物質を添加して、その気化により炎の性質を変えて難燃効果を出します。ハロゲン化合物などを難燃剤として添加するのが代表的です。しかし、この方法はシリコーンの難燃化に、通常効果を発揮しません。例えば、シリコーンゴムにそのような難燃剤を添加しても、加工されたゴム部品が高温雰囲気に曝された際に難燃削が徐々に揮散したり、分解したりして効力を失うからです。
シリコーンの難燃化には、白金の化合物が添加されます。そのメカニズムは明確ではありませんが、燃焼の際の熱により発生が促進される可燃性の分解生成物の生成を抑える効果があるのでしょう。先に述べた2)のメカニズムだと考えられています。
最後に、シリコーンは、仮に燃えたとしても発煙量や有毒ガスの発生が少なく、これは他の高分子材料に比べて重要な特長です。
A. ロールミルを用いて成形加工するシリコーンゴムのことです。天然ゴムや一般の合成ゴムと同様に、ロール作業で可塑化、加硫剤配合、シート分出し、色づけをして、成形加工します。
ミラブル型シリコーンゴムはHCR(熱加硫シリコーンゴム、Heat Cured Rubber)、またはHVR(Heat Vulcanizing Rubber)などとも呼ばれます。
A. 汎用品、高引裂き成形品、耐熱成形品、難燃成形品、押出し成形品、導電部品、電磁波シールド、熱伝導部品などに適した各種グレードをご用意しています。詳しくは、弊社ミラブル型シリコーンゴム製品物性一覧表をご参照ください。
A. まず、耐熱性に優れています。一般的に、連続使用温度は200℃前後です。機械的強度が低いとされているシリコーンゴムですが、温度による強度の変化がごく小さいので、高温下ではフッ素ゴムをしのぎます。また、脆化温度も-60℃以下であり、高温から低温まで幅広い温度範囲にわたって安定したゴム特性を維持します。
このほかにも、意匠性に優れること、硫黄加硫でないため異臭の少ないゴム成形品が得られるなどの特長もあります。
A. 原料は、生ゴム、充填剤、加硫剤、特性向上剤などです。
A.
生ゴムは、分子量が約40万~70万の無色・透明なシリコーンポリマーです。
A.
「充填剤」とは、合成シリカ、珪藻土、石英、炭酸カルシウムなどで構成される微粉です。特に合成シリカ系充填剤は、極めて高い補強効果を示します。生ゴムだけを加硫すると、引張強さは3~5 MPaと、使用に十分な強度を達成できません。充填剤を配合することにより、約10~40倍もの強度が達成されます。
A. 有機過酸化物(パーオキサイド)と白金化合物が主なものです。プレス成形にはアルキル系有機過酸化物、押出し成形にはアシル系有機過酸化物、さらにカーボン配合導電性シリコーンゴムの押出し成形には白金化合物が使用されます
A. 一般的に、シリコーンゴムコンパウンドには生ゴム、充填剤、特性向上剤などが配合されており、加硫剤は別に梱包されています。品番の後にUの表示がある製品(例:TSE221~6U)には、加硫剤が配合されていません。
A. 一次加硫によって成形され、ゴム物性もほぼ達成されますが、高温下での物性の安定化、あるいは成形品に残存している加硫剤の分解生成物や低分子量シリコーン成分の除去などを目的としたものです。 二次加硫は、200℃で4時間程度が標準です。 ミラブル型シリコーンゴムの詳細は、弊社営業部門にお問い合わせください。
*The marks followed by an asterisk (*) are trademarks of Momentive Performance Materials Inc.